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 V 人間は宇宙をひどく誤解している
 
 9. 「望遠鏡」と「カマキリ」と「犬」と「人間」に「秩序」を与える
  またまた、いきなり考えてもらうことから始めよう。
思考開始:下の絵の「円」の中にある指示通りに、「望遠鏡」(物体)と「犬」と「カマキリ」と「人間」(生き物)
      を配置して、一日だけその場に留まるようにして欲しい。どんな方法を用いても構わない。
      そういう状態になるまで、どれだけの時間がかかっても構わない。

  いやぁ、別段むつかしいことを頼んでいるわけではない。指示された場所に「3種類の生き物」と「1種類の物体」を、1日だけ、その場所にとどまるようにして欲しいだけだ。
 簡単なところから始めるとしよう。まずは「望遠鏡」だが、これは簡単、あなたが持って行ってそこに置けばいいだけだ。あなたは物理的な「力」を行使して、望遠鏡をしかるべき場所に置いた。たったそれだけで、望遠鏡は秩序を与えられて、1日でも2日でもずっとそこにある。(泥棒とか、火事とか地震なんかは考えなくてもいい。)
 次に簡単そうなのは「犬」か「カマキリ」か。どちらも「遮蔽」を使えば、そこからは出られないから、まず考えられるのは「ケージ」と「虫かご」を使うことだ。「遮蔽」によって彼らの行動を制限すれば、秩序を与えることができる。次にカマキリも犬も「エサ」で釣る、というのはどうだろう。両方共、エサには釣られてしばらくはそこにいてくれるかもしれないが、満腹になるとどっかに行ってしまうだろうから、1日はちょっとむつかしい。そして「犬」になら「訓練」が使える。「訓練」したら、賢くて忍耐のある犬なら、1日ぐらいはケージに入れなくてもそこにじっとしてくれている。「カマキリ」に「訓練」は使えるかな? カマキリは無理だろうな。やはり「訓練」が使えるのは、もうちょっと進化した動物だけだろう。とはいえ、「1日じっとしていろ」という指示は犬でさえもちょっとむつかしい課題だから当然カマキリにはできないが、「訓練」は結構な数の動物には使えるものだ。「訓練」とは「同じことを何度も繰り返すこと」で「ルール」を「学習」させることだ。「訓練」された生き物は、ルールに従った秩序ある行動をとる。池の鯉は人の足音で岸辺に寄ってくるようになるのを知っているだろう。同じことを繰り返し繰り返し行っていると、動物は「学習」し、自らの行動を自然と制限するようになる。(学習能力は植物にもあるし、細菌にもウィルスにもある。(ただし、それは「学習」とは呼ばずに「反射」と呼んでいる。)だから、「ルール」を与える方の側から言うとそれは「訓練」だが、与えられる方の側から言うと「学習」ということになる。「訓練」は魚類でさえ既に使える方法だから、多くの動物に使えるだろう。ただし、「訓練」は「目的」がないと使えない。動物は何らかの目的があるから「訓練」することに耐えるし、自ら進んで「学習」もするのである。目的は「エサ」とは限らないが、まぁ大抵の動物は「エサ」だろう。でも、ほかの「報酬」もあるかもしれない、例えば「安全」とか、「喜び」などの快楽も目的になりうるかもしれない。犬は最初のうちは「エサ」目当てだろうが、そのうちに主人の言うことを嬉々として聞くようになって、褒めてもらうことや主人が喜んでくれることを報酬としてやるようになるとも思える。だが、何の目的もないのに「訓練」に耐え「学習」する生き物というのはいない、と思う。
 他にはあるだろうか? 今は思いつかなくても、後で思い付くかもしれない。だから、先に進もう。 さて、やっかいな「生き物」が最後に残った。「人間」だ。この絵では紫のスーツを着たバスガイドさんかな?と思われる女性だ。彼女には、どうやったら1日だけ指示した場所に居てもらえるだろうか? 監禁するという方法はもちろん使えるが、能がないので他の方法を探そう。エサで釣るも使えるであろう。いくらかわからないが、「報酬」を渡せばいてもらえるだろうし、文字通りの「エサ」として、ミシュランの3つ星レストランで「食べ放題」させてあげる、と言っても1日ぐらいならいてくれそうだ。ただし、実家が裕福で、おこづかいが月に100万なんてお嬢さんなら、この方法は無理かもしれない。まだあるかな?「訓練」はどうだ? 人間にとっては、1日じっとしていることぐらい訓練するほどのこともないな、ただいるだけだから。 「てめぇ、言うこと聞かねぇと、耳の穴から手ぇ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わせるぞ!」というような「脅し」も使えるかもしれない。相手は女性だから、乱暴されては困るだろうし、1日ぐらいならおとなしくしていてくれるかも知れない。でも、この女性がもし見かけによらず、柔道3段、合気道5段、お父さんがスタン・ハンセンだったら、脅しも無理かなぁ。他にはあるか? 「犬」も「カマキリ」も「人間」も「生き物」だから、ごちゃごちゃ言っとらんと、息の根を止めれば「物体」になるから、殺してから置いておくという方法もある。この方法なら、1日と言わずずっとそこに居るわけだけだが、それは「居る」ではなくて「在る」になってしまう。 

 馬鹿なことばかりを話してきた、と思われるかもしれない。私がここで述べたかったのは、物理的な「力」を加えれば簡単に言うことを聞いてくれて「秩序」を与えることができる「物質(モノ)」と、物理的な「力」を加えるという単純なことでは言うことを聞いてくれない「生き物」との違いをはっきりと理解してもらうためだ。つまり「生き物」は物理的な「力」では「秩序」を与えられない、ということだ。
 自分の部屋を片付けるとしよう。モノはデタラメに置いてあって乱雑で汚い部屋を片付けるのだ。あなたは、自分の物理的な「力」を使ってモノを整理してゆく。自分のわかりやすいように、使いやすいようにあなた自身の「力」を使って部屋の中にあるモノを片付けてゆくわけだ。どんなに汚い部屋でも、人が物理的な「力」を使えば片付けること、つまり「秩序」ある状態を作り出すことができる。しかし、それは相手がモノだけに限った話であって、「生き物」は基本的に物理的な「力」の行使では「秩序」ある状態にすることができない。生きている犬や猫を物理的な「力」でもって整理整頓することはできないのだ。むつかしく考えなくても、「生き物」にはモノとは決定的に異なる違いがあって、それで物理的な「力」によっては「秩序」を与えることができないわけだが、その違いとは「生き物は自由に使えるエネルギーを体内に留保していること」だ。生き物は自分の運動や変化を「外力」に頼らずとも自分自身の中にあるエネルギーで行えるから、外から加えられる「力」の「ルール」だけに従わなくて済むわけだ。物質は、ただ物理的な「力」を加えるだけで「力」にあるルールには確実に従うのだが、逆らおうにも「外力」だけが自分に変化を与える唯一の「動力源」なのだから、逆らいようがない。(ただし、例外はある。内部に自らを自らのエネルギーで変化させることができるエネルギーを持つ物体もある。恒星は内部に自分を輝かせるエネルギーを持っている。太陽のコロナやプロミネンス、黒点などの「太陽活動」は太陽自身が持つ内部エネルギーによるもので、外部の力を要してはいない。また、地球のようにマグマやマントルという熱源を持った惑星もまた、その熱源が冷えてしまうまでは「自己変革」ができる。地球で起こる地震や大陸移動は外力によるものではなく、地球の内部にあるエネルギーによって起こる現象だ。だが、人間が見渡す世界にある「普通のモノ」のほとんどは「外力」によってのみ変化する。「普通のモノ」は内部にエネルギーをもっていないわけではないが、自らを変化させたり、自ら動き出したりできるほどの「力」とはならないので、変化するには外力に頼るほかはないのである。)
 さて、この地球上で、内部エネルギーを持つ「生き物」に対して、ただ物理的な「力」を行使することによって、継続的に「秩序」をもたらしている「力」がたった一つだけだがある。それが「地球」の『万有引力』だ。
 この「力」によって、いくら内部エネルギーを持つ生き物といえども、飛行能力のないものは、いつも地表面に一番近い場所だけにいること、移動することにその行動が制限されている。飛行能力を持つものは、羽ばたきを止めれば同じ状態になる。空気の中を浮遊する細菌やウィルスでさえ、いつかは下に落ちるのである。みなさんを物理的な力で制限を与えているたった一つの力がこの星の重力であること、そしてそれはこの星の全ての生き物にも共通の「ルール」をもたらしていることを是非覚えておいて欲しい。
 
 さて、勘が良い方はうすうす感じているかもしれない。それは
 生き物にとっては、あるいは「生き物」が織り成す世界では、ただ物理的な「力」を加えても「秩序」ある状態は作れないということだ。物理的な「力」では原則として生物に「秩序」は与えられないのだ。人間もまた「生物」であることに間違いはない。だから、人間社会を「秩序」ある状態にするために物理的な「力」は使えないのである。


 「物理的な力」では「秩序」ある状態を作り出せないのが、「生き物」だ。だが、「生き物」にとって「物理的な力」が「秩序」を創出する「ルール」と無関係かといえばそうではない。私たち生き物の中に、「物理的な力」が生き物を「ルール」で制限して、「秩序」を創出することができる「習性」を持った生き物がいるのである。
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